存在しない完全

ただの雑記ブログ

空に手を

f:id:mynorna:20200721190405j:plain
川のほとりに座って空を見上げる。今日は昼過ぎに急な激しい通り雨に見舞われて仕事がてんやわんやだった。そんな天気だった名残を分厚く残しながらも、円を描くように青い空が顔を覗かせていた。

空を見上げてみようなんて考えて、上を見ることなんてない。歩道から川岸ギリギリまで降りることのできる階段に座るのは、今日初めてのことではない。いつも夕方はここに座って、物思いにふける。今日はなんとなく、たまたま。空が気になった。

日は沈み始めていて、日差しはない。晴れといえば晴れなんだけど、曇りといえば曇りである。文字通り風穴が空いている空がなんだかきれいで眺めていた。ゆっくりと、雲が西へ移動して行くのがわかった。

手を伸ばせば届きそうな気がした。もちろん「気がした」だけである。雲に触れるはずもない。ふと、北海道に行った時のことを思い出した。

高二の時の修学旅行である。地元の空港までのバス移動中は雨だった。これから行く北海道はどんな天気なのだろう。2月だから、やっぱり雪が降ってるのかな。私たちの期待をのせた飛行機は雨の降りしきる滑走路を駆け抜ける。斜めになる機体。飛行機に乗るのは人生二回目だが、なかなかこれが怖いんだ。ジェットコースターが上へ上がっている時と重なる。窓からは、白い壁しか見えなかった。

高度が十分になり、飛行が安定する。外を見た私は驚いた。晴れているのだ。まぶしい。下を覗くと雲が広がっている。というか、雲にまみれている、散らかっている。なんと。どういうことだ。頭が混乱していた。

いま考えると当たり前すぎて笑ってしまう。飛行機が雲の上を飛んでいて、雲から雨が降るのだからその上にいるのなら当然晴れている。それだけ。それだけなのに、不思議な感じがしていた。頭ではわかっていたのに、いざ自分がその状況にいると。出発前の天気が雨だっただけに、そこは別世界だった。

今の、この雲の上にも、きっと別世界が今日も広がっているのだろう。少しでいいからまた行ってみたくて。この空は北海道とも、私が前に住んでいた関西とも、繋がっている。この空は繋がっているんだね、などとチープで青臭いことを言って感傷に浸りたいわけではないが、それは紛れもない事実である。誰か知り合いがいるわけではないけど、また北海道へ行ってみたくなった。

青い風穴はつぶれた。雲は進み続ける。このところ雨が降る日も減り、梅雨明けは近そうだ。
明日の空はどんな表情を見せてくれるだろうか。